高井研究室

研究内容

社会の持続的かつ高度な発展を実現するためには安全かつ高効率な資源・エネルギーの利用が不可欠になっています.特にエネルギーの観点で注目されている燃料電池,太陽電池,高性能蓄電池など有力な次世代型のエネルギー変換材料・デバイスにおいては,いずれも炭素材料や酸化物といった基本構造を担う材料と異種化学種との界面における相互作用がその動作原理として重要な役割を果たしています.また,社会基盤を支える磁性体および触媒においては資源枯渇や安全性の問題を抱えている特定の希少元素に強く依存した材料が広範に普及しており,これらを軽元素を中心としたありふれた元素種にもとづく材料によって代替することが危急の課題となっています.

高井研究室では,特に炭素などの軽元素からなる固体に注目して,構造の幾何学的な性質や異種物質との相互作用にもとづく機能性の発現原理を明らかにしていきます.さらに明らかになった機能性発現原理に基づいた新たな物質・材料の「設計」を目指していきます.とかく深刻な社会問題も,自らの手で解決してしまおうという楽観的な意気込みで一緒に頑張りませんか?





原子層物質と異種物質との界面相互作用による機能性発現原理の解明

炭素原子1つ分の厚さしか持たないグラフェンや単層遷移金属ダイカルコゲナイドなどの原子層物質(2次元物質)はこれまで存在した物質とは全く異なる性質を示すことから,それ自体が基礎物理・化学における大きな関心を集めています.一方,これら原子層物質は構成元素が全て表面部位に属しているという2次元物質としての特徴から,外界の異種物質との界面における相互作用が物質の機能性に大きな影響を与えています.また,触媒や蓄電池や太陽電池などのエネルギーデバイスではこのような異種物質間の界面が機能性の発現原理において重要な役割を果たしています.そこで,CVDや化学輸送法,へき開,表面昇華などさまざまな手法を屈指してこれら2次元物質を合成し,表面への分子吸着や基板界面への単分子膜の形成により2次元物質と接する異種物質を導入することにより,これまでに無い触媒活性や電気伝導性などの機能性発現を試みてます.さらにその機能性を詳細に調べることにより発現原理を明らかにして,新たな物質・材料設計にフィードバックしていきます.



ナノ空間空隙を使った界面相互作用による触媒,磁性体,エネルギーデバイスの開拓

原子層物質は異種物質間の界面相互作用のモデルとなる物質ですが,実際に界面相互作用を利用した機能性材料を設計するには大きな表面積を持つナノ空間空隙物質が重要な役割を果たします.ナノ空間空隙物質としては活性炭のような伝統的な多孔質からシート状の2次元物質が積層して層間に異種物質を挿入可能な層状物質まで多くの物質が挙げられます.また,ナノ空間空隙物質は2次元・3次元的な周期構造を持ちうるため,異種物質との長距離にわたる秩序だった相互作用により,局所的な界面相互作用だけでは得られない磁性などの機能性を発現させることが可能です.さらに環境汚染物質を吸着・分解・排出するといった複数の機能性を材料の中に設計することも可能となります.このようなナノ空間空隙物質に異種物質として,アルカリ金属やハロゲン,酸,有機分子といった典型的な物質だけでなく環境汚染物質や生体物質なども導入して,磁性や触媒活性のみならず環境浄化,生理活性といった幅広い機能性を発現することを試みています.

ナノ粒子に対する表面修飾による機能性の発現

原子数で数100個から数万個の大きさを持つナノ粒子は電子構造の量子化や格子構造の緩和などにより,通常の物質とは異なる性質を持つことが期待されるため,これまで大きく注目されてきました.さらにナノ粒子は表面の割合が多いことから,表面を介して異種物質との大きな界面相互作用が期待されるだけでなく,表面修飾により粒子全体の性質を変えて新たな機能性を発現させることも可能です.そこでダイヤモンドのナノ粒子に注目して,ダイヤモンド自体が持つ半導体としての優れた特性や生体親和性が高い特徴を生かして,ナノダイヤモンド表面を化学的に修飾してさまざまな官能基を導入し,画像診断による先端医療に用いるバイオマーカーや次世代情報処理技術を担う量子コンピュータの素子として働く材料の構築を目指しています



このようなこれまでに無い機能性を発現する材料を創りだすには,物質において機能性が現れる原理を解明する必要があり,これらの研究を行うには十分な背景知識や基礎理論の理解が大切です.高井研究室では実験結果の報告や研究動向の調査に関するセミナーだけではなく,メンバーの基礎的学問知識や理論背景の理解を深めるための勉強会を毎週開催して,全員が研究内容を自分で理解したうえで実験や発表が出来るように指導を行っています.